たった一字に深い意味を秘めている文字は、世界でも漢字だけです。
そこには、人のこころを豊かにする言霊が宿っています。
その意味を知れば、さらに、こころは豊かになるでしょう。
今回ご紹介するハートフル・キーワードは、「標」です。



ゲーテは「目標に近づくほど、困難は増大する」と言いましたが、シラーは「人は大きな目標を持ってこそ、自ずから大きくなる」と語りました。1954年、アメリカのイエール大学で「財産目標」に関する調査が行なわれました。調査の結果、「鮮明な目標を持つ」人は全体の三%しかいませんでした。「願望に近い、大まかな目標にある」人も全体の11%にすぎませんでした。


これに対して、「目標のない」人はなんと86%もいました。
この調査から20年後、その学生たちが卒業後どのようになったのか、という趣旨で再び調査がなされました。すると、「鮮明な目標を持つ」と答えた3%の卒業生の財産合計額が、残りの97%の卒業生の財産合計額よりも多かったという報告が出たのです。
「成功者は、全人口の3%」とよく言われるのは、この有名な調査結果に起因しています。



これに対して、経済学者のV・パレートは、所得分布の不平等を示すためにある法則を用いました。それが「80・20の法則」あるいは、パレートの法則と呼ばれるものです。例えば、あなたが持っているハンカチやネクタイのうち、あなたが好んで使うのは、全部のなかの20%であり、残りの80%はあまり使いません。


営業を例にとれば、総売上の80%は、20%の営業マンによって達成されています。あるいは、顧客の20%が、総売上の80%を占めています。時間でいうなら、優先度の高い仕事の20%が、時間消費量の80%を占める。このような魔法のような比率把握がパレートの法則です。わたしは自社の目標を定めるうえで、この「80・20の法則」をいつも活用することを心がけています。



「標」といえば、ベンチマーキングも思い浮かびます。業務プロセスに着眼して、他社の優れた事例を分析し、自社の業務効率向上へとつなげる経営手法です。同じプロセスに関する最高の有料事例はベスト・プラクティスと呼ばれます。でも、GEやサウスウエスト航空は成功したようですが、日本企業はベンチマーキングに関してはあまりうまくいっていないようです。



リーダー個人の「標」としては、憧れの人物を目標にするというのがあります。どれほど多くの経営者が松下幸之助をめざしてきたことでしょうか。そして歴史上の人物を指標にする者もいます。ハンニバルカエサルはアレクサンダーを標とし、徳川家康源頼朝を標にしたといいます。そういった目標となる人物こそ、リーダーにとって不可欠なものかもしれません。なお、「標」については、『龍馬とカエサル』(三五館)に詳しく書きました。


龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

龍馬とカエサル―ハートフル・リーダーシップの研究

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年7月9日 佐久間庸和