こころのジパング

今日の「毎日新聞」朝刊に第31回目の「北九州発 ハートフル通信」が掲載されました。
今回のタイトルは、「こころのジパング」です。


毎日新聞」3月6日朝刊


先日、今年最初の著書となる『決定版 おもてなし入門』(実業之日本社)を上梓しました。
2020年のオリンピック開催地が東京に決定したとき、日本中が喜びに包まれました。さまざまな人による東京招致のプレゼンテーションの映像も繰り返しテレビで流され、ネットでも再生されました。その中で、一番印象に残ったのが、滝川クリステルさんのプレゼンでした。



彼女は流ちょうなフランス語とナチュラルな笑顔で、「お・も・て・な・し」と1字づつ印を切るように口にした後、合掌して「おもてなし」と言い直しました。この滝川さんの姿を見て、改めて「おもてなし」という日本語を再認識した方も多かったのではないでしょうか。
わたしは創業70周年を数える小倉の松柏園ホテルの三代目として生まれ、幼少の頃はホテル内に住んでいました。ですから、「おもてなし」という言葉は物心ついた頃から耳にしていました。いま、わたしはサンレーという冠婚葬祭の会社を経営しています。冠婚葬祭の根本をなすのは「礼」の精神です。


「礼」とは何でしょうか。それは、2500年前に中国で孔子が説いた大いなる教えです。
平たくいえば、「人間尊重」ということでしょう。わが社では、「人間尊重」をミッションにしている。本業がホスピタリティー・サービスの提供なので、わが社では、お客様を大切にする“こころ”はもちろん、それを“かたち”にすることを何よりも重んじています。こうした接客サービス業としては当たり前のことが一般の方々の「おもてなし」においても、きっと何かのヒントになるのではないかと思います。



日本人の“こころ”は、神道・仏教・儒教の3つによって支えられています。
そして、「おもてなし」にもそれらの教えが入り込んでいます。
たとえば、神道の「神祭」では、物言わぬ神に対して、お神酒や米や野菜などの神饌を捧げます。この「察する」という心こそ、「おもてなし」の源流と言えるのではないでしょうか。
また、仏教には無私の心で相手に施す「無財の七施」があります。
さらに前述した「礼」の精神は儒教の神髄そのものです。
これらすべてが、日本の「おもてなし」文化を支えているのです。



「おもてなし」は日本文化そのものです。
かつての日本は、黄金の国として「ジパング」と称されました。これからは「こころのジパング」を目指したいものですね。「ジャパニーズ・ホスピタリティ」としての「おもてなし」こそは、人類が21世紀において平和で幸福な社会をつくるための最大のキーワードです。そして、その中心的役割を担うのは、わたしたち日本人だと思います。


決定版 おもてなし入門』(実業之日本社



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年3月6日 佐久間庸和