時代にマッチした冠婚葬祭を提案

ブログ「I・B取材」でお知らせしたように、1月13日に(株)データ・マックスが発行する経営情報誌「I・B(アイ・ビー)」のインタビュー取材を受けました。わたしのインタビュー記事が2009年10月1日号に掲載され、表紙にも登場させていただきました。じつに、5年半ぶりの同誌のトップインタビュー取材でしたが、その掲載誌が本日刊行されました。


「I・B」2015年2月16日号の表紙



記事は「I・Bトップインタビュー」として、「時代にマッチした冠婚葬祭を提案 人とのつながりを大切にする社会を!」のタイトルがついています。また、「北九州市小倉北区に本社を構える(株)サンレー。同社は地域に根差しながら各地で冠婚葬祭業を営む老舗企業だ。結婚式をしない、または簡易化するカップルや、葬儀を軽んじる人が増えてきている昨今、同社の佐久間庸和社長から冠婚葬祭について本来の意義と時代に即した提案をうかがった」というリード文の後に「多様化するニーズに応える」「エンジェルウェディングとハイブリッドセレモニー」「『終活』ではなく『修活』」「人生を修めるための手伝い」の小見出しに沿って以下のようなインタビュー記事が掲載されています。



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「I・B」2015年2月16日号より



多様化するニーズに応える


――御社は北九州エリアを中心に展開されている冠婚葬祭の老舗企業でいらっしゃいます。佐久間社長がトップに就任されて以来、次々と社内改革を行い、進化を遂げていらっしゃる印象があります。
佐久間 2001年に社長に就任いたしました。以来、地域になくてはならない企業になるために工夫を重ねてきましたね。冠婚葬祭は、人の一生の節目ふしめを飾る重要な行事です。その折々を、私たちがおもてなしさせていただくことをとても光栄に思っています。地域の皆様の人生を飾る重要な場を、できうる限りの最高のおもてなしでお手伝いしたいと願っております。そして、地域の方々とともに止まることなく歩んでいきたいと願っています。



――まずは最近の結婚式についておうかがいします。最近のブライダルのトレンドなどありましたら、お聞かせください。
佐久間 近年、少子高齢化が進んでいることは皆さまご承知のとおりです。結婚する人の数も減少していますし、その内容もさまざまな形式がとられるようになりました。結婚式自体を挙げない夫婦も増加しているのが現状ですね。しかし、結婚式を挙げなかった方のうち、約3割以上の方が式を挙げなかったことを後悔しているという調査結果があります。夫婦になって、子供が生まれ、その子が成長し成人したときに自分たちの結婚した時の写真がない、ということに気がついてさみしく思う方も多くいらっしゃると聞いています。そういった後悔をしないように、そして何よりも、結婚するお2人の人生の門出をきちんとお祝いするためにも、私たちはさまざまな形式の「結婚式」を提案しております。



――さまざまな形式と言いますと、どのようなものがあるのでしょうか。
佐久間 従来のような、身内の方や仕事の関係者の方たちなど、多くの方を招いて行われる披露宴だけでなくて、小さな結婚式などもご提案できるようにしています。結婚式を挙げない大きな理由の1つに経済的な理由があります。結婚式は挙げたいけれども、金銭的な心配からそれを躊躇しているご夫婦に、安心してご利用いただけるプランが小さい結婚式です。人生の節目の幸せを、親族を中心とした近しい方々で共有する場も、とても意義のあることだと思います。また、結婚式を挙げない理由の1つに時間的な制約というものもありますね。



エンジェルウェディングとハイブリッドセレモニー


――時間的な制約というと、どういう意味でしょうか。
佐久間 授かり婚と言われるような、新婦様のおなかにお子さまがいらっしゃるケースがあります。時間が経つにしたがっておなかが大きくなってきますから、挙式や披露宴をためらう方もいらっしゃるようです。そういった場合、私たちは結婚式の祝福をご夫婦とおなかのお子さまの3人で受けるという意味を込めて、「エンジェルウェディング」というプランを提案しております。お子さまが生まれるのはとても幸せなことです。ご夫婦お2人とともに、新しい人生をみんなに祝ってもらえるのは幸せなことだと思い、そうネーミングしました。



――なるほど。いろいろな状況があり、それぞれに希望されるものが異なるのですね。
佐久間 現在は、ほんとうに多種多様なご希望があります。できる限りご希望にそうように、また、プロとしてご満足いただけるように心がけております。たとえば、お子さまがお生まれになった後に結婚式を挙げるケースもあります。場合によっては、お子さまの節句のお祝いに合わせて、結婚式や婚礼写真の撮影などをご提案差し上げる場合もあります。「ハイブリッドセレモニー」と名付けているのですが、祝い事を併せて行うということも、とても喜ばしいことですよね。私たちはご要望にお応えできる体制を整え、ご満足いただき思い出に残る場としていただきたいと願っています。



――結婚式に対するニーズも、他業種の嗜好の変化と同じく、多様化しているのですね。御社では、婚活支援もされていらっしゃるとうかがいました。
佐久間 はい。結婚したいのに出会いがない、という方も多くいらっしゃいます。そういった方に、出会いの場を提供していくことも、これからの時代に必要なことだと考えております。私たちがお世話させていただいた縁で結ばれた方々が幸せになってくれること、それが一番のやりがいですね。


「I・B」2015年2月16日号より



「終活」ではなく「修活」


――結婚式と同様に、葬儀への意識も多様化が進んでいると聞いています。
佐久間 そうですね。近年、葬儀に対する意識が変化していっていることを感じます。考え方の潮流だと思うのですが、葬儀をする意義から問われる時代となりました。最近では「0(ゼロ)葬」という言葉なども散見されるようになってきています。生きている人が亡くなった方に引きずられるのはおかしい、と考える方も増えてきたようです。それに伴って、葬儀をしない方も増えてきているようです。わたしは、その考え方には断固として反対しています。わたしたちが考えている葬儀の意義は、死後に「ホトケ」という永遠の存在になるための儀式としてのものです。日本では古来、死者を不滅の存在として認識してきました。その考え方を踏襲して、現代の葬儀があります。私たち自身が冠婚葬祭業だからというのではなく、死を「人生を修める場」ととらえて、自分に関係した多くの方々への感謝の場、死後も永遠に存在し続けるための場として葬儀をとらえております。終活という言葉が流行語になっていますが、私は「修活」という字を充てるようにしています。人生を修めるための前向きな活動ということです。



――葬儀は人生を修める場という考え方には納得です。
佐久間 宗教、宗派にかかわらず、一人の生き方のこの世での最期のセレモニーなのですから、どうエンディングを迎えるかというのは大きな問題ではないかと考えています。その場を私たちなりにご提供することができたらと考えております。



――意識の変化にともない、形式にも変化が表れているのでしょうか。
佐久間 そうですね。従来通りの葬儀がもちろん主流ではありますが、現在では規制緩和もあり海洋葬、樹木葬などを希望される方も増えてきています。自分の好きだった場所にいたいと考える方が増えてきているのですね。沖縄の海に散骨したり、樹木の一部となって生き続けたいと思ったり、そういったご本人の気持ちは大切にしなくてはいけないと思います。



――「0葬」の一方で、葬儀を積極的に、前向きに考える方も増えてきているのですね。
佐久間 そう感じます。最近では宇宙葬というものもあるのですよ。火葬した後、遺骨の一部をロケットで宇宙にもっていき、地球の周回軌道を数カ月回った後、大気圏に突入して流れ星になる、というものです。これは世界的に注目されています。また、さらに進んで月面葬というものも実現されようとしています。遺骨をカプセルに入れて、それをロケットで月面に持っていき、月面に安置するというものです。月を墓標にするなんて、とてもロマンティックなことだと思います。家族や友人は月を見るたびに故人を思い出すきっかけになるでしょう。月は古くから永遠の命の象徴でした。新月から三日月、半月、満月、そしてまた欠けていく。これを繰り返す月は、まさにとめどない命の流れそのものだと考えてきました。これは民族、宗教を越えて、世界的に見られる思想です。その月で永遠の存在になるというのはとても意義のあることだと思います。月には国境はないですから、世界の平和にもつながるかも知れませんね。


人生を修めるためのお手伝い


――死を人生の一部、その最終章ととらえて前向きに、永遠の存在になるためステップだと考えるのですね。その考え方を紫雲閣グループの旗艦店である小倉紫雲閣のリニューアルにも取り入れたとうかがいました。
佐久間 はい。時代に応じて冠婚葬祭もアップデートしていかなくてはいけません。これまでのいいところは残し、新たなニーズにも応えられるように紫雲閣をリニューアルさせていただきました。まず、玄関を入っていただくと、「月の広場」というロータリーの中央に円形の噴水があります。この噴水は、月の満ち欠けに応じて水が噴き出すようにプログラムされています。月と永遠に生きること、その願いを演出できる形としました。



――なるほど。そのロータリーを、霊柩車がまわって出棺となるのですね。
佐久間 そうですね。これまで葬儀というと、出棺にあまり重きを置いていなかったように思います。セレモニーホールによっては、裏口のような狭いところからお見送りするようなところもあります。わたしは葬儀とは人生をアートのような作品としてまとめる場だと考えていますので、出棺まで思い出に残るものにしたいと思い、このような形にしました。このロータリーを霊柩車が周り、それと同時に鐘を3回打つようにしています。1回目の鐘は「感謝」、2回目の鐘は「祈り」、3回目の鐘は「癒し」を表しています。出棺の際にクラクションを鳴らすことが風習になっていますが、クラクションは本来、警笛ですよね。警笛というと、人に危険を知らせるものです。それは葬儀には不向きであると私は考え、鐘を打つことにいたしました。
この新時代のセレモニーを「禮鐘の儀」といいます。



――クラクションを鳴らすよりも、ずっと心地いい出棺になりそうです。全体的な外観は、日本古来の建築物のような印象で、とても落ち着いていますね。
佐久間 そう言っていただけるとうれしいです。外観、内装も日本古来の神社仏閣を参考にリニューアルさせていただきました。葬儀は、いわば日本の文化の結晶のようなものだと考えています。ただ、従来型の葬儀は形式に引きづられすぎて制度疲労しているのではないかと感じるところもあります。それがひいては葬儀離れなどにもつながっているのではないでしょうか。時代に合わせて、続けるべきところは続け、変えるべきところは変えていく必要があると思います。儀式全体をイノベートしていく時期にきているのではないでしょうか。
近年、孤独死も社会問題になってきています。わたしは、こういったニュースを目にするたびに心が非常に痛みます。これは完全にボランティアなのですが、地域とお年寄りたちとのつながりを深めていただくためにイベントを主催しております。フランスで始まった地域イベントなのですが、「隣人祭り」と言いまして、地域の方々を集めて食事会をするというものです。地域とつながりをもつことで孤独なお年寄りがいなくなれば、孤独に死を迎えることもなくなると思います。それぞれが、きちんと思うようなエンディングを迎えられること、それこそが私たちの最大の願いでもあります。



――なるほど。亡くなる方ご自身だけでなく、残されたご家族、友人のケアにも努めていらっしゃるとうかがいました。
佐久間 わたしたちはムーンギャラリーなど、ご家族の方々とお話をするための場も設けております。哀しみをケアすることをグリーフケアと言いますが、そのための上級心理カウンセラー資格所有者も社内に60名在籍しています。このカウンセラーは、グリーフケアだけでなく、たとえば結婚のときのマリッジブルーなども相談を承ることができます。もし、災害が起こった場合には、私たちは現場に赴き、心のケアをさせていただきたいと思っております。そうやって、世の人々に必要とされる存在になることが企業の使命であり、そういう企業でなくては、これからの時代は存続していくことも難しいと思います。わたしたちも、そのような企業になれるよう、日々精進していくつもりです。



――人生の節目ごとに、人々の心に残るセレモニーを提供すること。そして社会に必要とされる会社になること。サンレーを支える思想を学ばせていただきました。本日はご多忙の中、取材協力ありがとうございました。



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「I・B」関係者のみなさま、このたびはお世話になりました。特に、インタビューの聞き手、文、構成を担当して下さった柳茂嘉さん、わたしの真意を汲み取った良い取材をして下さり、ありがとうございました。最新刊の『決定版 おもてなし入門』(実業之日本社)も写真入りでご紹介いただき、心より御礼を申し上げます。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2015年2月16日 佐久間庸和