ミャンマー授業

この記事は、当ブログ800本目の記事です。
4日の早朝、わたしは東京の定宿で目覚めました。
軽い朝食を済ませると、羽田空港へと向かいました。
空港のラウンジでコーヒーを飲んでいると、窓から富士山が見えました。
ブログ「無事に帰国しました」に書いたように、ミャンマーからの帰りの飛行機の機内から富士山が見えたことを思い出しました。富士山が大好きなわたしは、その雄姿を数日前に入手したばかりのiPhone6で撮影しながら「今日も、素敵な一日になりそうだな」と思いました。それから、スターフライヤーに乗って北九州に戻ってきました。


羽田空港のラウンジから富士山が見えました



北九州空港に到着すると、空港近くの東龍軒でチャンポンを食べてから、いったんサンレー本社に寄りました。いくつかの打ち合わせをした後、14時半から戸畑の明治学園高校で講演を行いました。演題は「ミャンマーについて〜未来を担うみなさんへ〜」です。


用意した写真レジュメ

用意した「ミャンマーについて」のレジュメ



明治学園は北九州を代表する名門私立校ですが、文部科学省のSGH(スーパー・グローバル・ハイスクール)アソシエイト校に指定されており、その授業内講演を依頼されたのです。今年はベトナム、タイ、ミャンマーなどの東南アジアの勉強に力を入れているということでした。わたしは先月のミャンマー訪問時の写真を編集したレジュメと、「ミャンマーについて」と題する総論的なレジュメの両方を用意して、それをパワーポイントで投影しながら講演しました。校内は写真撮影禁止ですので、残念ながら授業の様子はお見せできません。



最初に、ミャンマーの写真を見せながら話しました。
高校生のみなさんは、荷台に多くの人間が乗った車、黄金色に輝くパゴダ、活気溢れるマーケットなどの写真の1点1点を興味深く見ていました。続いて「ミャンマーについて」では、「ミャンマーってどこ?」「ミャンマーの概況」「国際社会への完全復帰を目指し、さらなる改革へ」「将来の国づくりへ向け抜本的改革を実施」「労働者の賃金」「民間企業の賃金」「潜在的な消費場」「ミャンマーへ進出している主な日本企業」「ミャンマーの人々」などを説明し、次いで「ミャンマーの教育制度」「学校建設支援」について話しました。



わたしは「ミャンマーは国連が最貧国と認定するくらいに物質的には貧しい国ですが、精神的には世界でも最も豊かな国の1つだと思います」と述べ、ミャンマーの人々が絶対的な敬意を示すのが僧侶、先生、両親であることを紹介しました。ミャンマーの人は収入のうちの3分の1を寺院に寄進し、3分の1を両親に仕送りし、残りの3分の1を自分の生活費に使うことを説明すると、高校生のみなさんは真剣な表情で聴いていました。
わたしは「みなさん、先生を尊敬していますか。先生は偉いんですよ。先生を尊敬すればするほど、授業の内容が頭に入りますよ」と述べ、さらに「両親を尊敬していますか。両親を尊敬すれば、みなさん自身が幸せになれますよ」と言いました。心から、そう思っています。


ニンプィンウーさんと



ここで10分の休憩を挟んで、講演を再開しましたが、わたしはミャンマーから来日して松柏園ホテルの衣装室で働いているニンプィンウーさんを紹介しました。
彼女は昨年10月に来日して、YMCA日本語学校で学び、学業で1位になるほどの頑張り屋さんです。民族衣装のロンジーを着たニンプィンウーさんは、自らの生い立ちを含め、故郷のミャンマーについて話しました。



現在28歳である彼女が生まれたのは人口40人の小さな村で、自給自足の生活を送っていたそうです。村の近くには川があり、雨が降るたびに水浸しになっていました。学校へは2時間歩いて通っていました。医療設備が整っておらず、マラリア熱が原因で亡くなる村人も多かったようです。彼女は医師になって村の人たちの命を救いたいと思い、大学の医学部を目指しますが、家が貧しくて断念、看護師の資格を取得します。


松柏園ホテルの衣装室で



その後、いろいろと紆余曲折あって、ニンプィンウーさんは日本の北九州市にやって来て、松柏園ホテルで働くことになりました。今はブライダルのドレスの仕事をしていますが、彼女は日本の着物を初めて見たとき、「なんて綺麗なの!」と感動したそうです。しかし、日本の新郎新婦があまり着物に関心を示さないことを不思議がっていました。
「なぜ、日本人はあんなに綺麗な着物を着ないのか?」という問いは、日本人であるわたしの心にも突き刺さりました。


松柏園ホテル庭園の桜の木の下で



ニンプィンウーさんは昨年初めて花見をしましたが、満開の桜の美しさに心から感動したそうです。日本語で一番好きな言葉は「習うより慣れろ」で、この言葉を知るまでは「日本語をマスターしなくては」と焦っていましたが、この言葉を知ってからは日本語に馴染んで自然と話せるようになったとか。わたしが心を揺さぶられたのは、彼女が「ミャンマーからたった1人で日本に来て本当に不安でしたが、わたしが会った日本人はみんな親切な人ばかりでした。譲り合いの習慣といい、日本人は素晴らしい民族だと思います」という一言でした。
わたしたち日本人は、日本の良さを本当に理解しているでしょうか。
大切なことを、ミャンマー人であるニンプィンウーさんに教わった気がします。



そして、彼女は「わたしはミャンマー人であることに誇りを持っています」と言いました。
「さっき、佐久間社長サンが言われたように、ミャンマー人は先生や両親を尊敬しています。もちろん、わたしもそうです。日本人は同じように、先生や両親を尊敬しているでしょうか。社長サンが言うように、ミャンマーは貧しい国ですが、ミャンマー人の心は豊かだと思います」と言いました。わたしは、「よく言った!」と拍手をしたい気分でした。



最後に、ニンプィンウーさんは自分の3つの夢について話しました。
1つめは、ミャンマーでブライダル・ドレスの仕事をすることです。
2つめは、ミャンマーの子どもたちに学校を作ってあげることです。
そして、3つめは、いつか故郷の村に病院を作って、そこで看護師として働き、村の人たちの命を救ってあげることだそうです。それを聴いたとき、わたしは非常に感動して涙が出ました。見ると、講演に同行していたサンレー企画部の石田恭一部長、冨樫勇之社員の目も潤んでいるように見えました。本当に、ニンプィンウーさんの話は素晴らしかったです!
高校生のみなさんも、きっと何かを感じてくれたのではないでしょうか。



それから、再び、わたしの講演に戻りました。わたしは「国際人になるためには宗教を知らなければならない」として、「世界の宗教分布」「世界の宗教人口」「世界の民族宗教」「世界の四大聖人」「上座仏教と大乗仏教」「混ざり合った日本人のこころ」「冠婚葬祭は文化の核」などについて説明し、それから「世界平和パゴダ」の話をしました。



最後に、学校側からのリクエストで高校生のみなさんに伝えたいことを話してほしいとのことで、わたしは「本を読め! 人と会え! 旅をしろ!」と訴えました。
さらには、「If you can dream it,you can do it.」という言葉を紹介しました。ウォルト・ディズニーの言葉ですが、わたしの座右の銘のひとつです。人間が夢見ることで、不可能なことなどひとつもありません。逆に言うなら、本当に実現できないことは、人間は初めから夢を見れないようになっているのです。ですから、「みなさんの夢は必ず実現します。今日初めて知ったけど、ニンプィンウーさんの3つの夢も絶対に実現します!」と言いました。そして、「今日はみなさんと会えて幸せでした。わたしの話を最後まで真剣に聴いてくれて、ありがとう!」と言うと、教室中から大きな拍手が起こって感激しました。



講演後にいくつかの質問が出ましたが、その中に「会社の経営者として、最も大切なことは何ですか?」という男子生徒からの質問がありました。わたしは「それは社会に貢献するという志です。北九州のみなさんからサンレーがあって助かる、サンレーがなくなったら困ると言っていただけるような、社会に必要な会社づくりを心掛けることです」と答えました。
それから、「この考え方は、ドラッカーという人から学びました」とも言いました。



また、「高校生の頃はどういう職業に就きたいと思っていましたか?」という女子生徒からの質問もありました。わたしは、「本が好きだったから、本を書く人になりたいと思っていました。いま、わたしには70冊もの著書があります。わたしは、会社の社長、大学の客員教授、そして作家の仕事を並行している状態です。もし、みなさんが将来たとえばお医者さん、弁護士さん、会社の社長、会社員などそれぞれの職業に就いたとしますよね。もちろんそれぞれ忙しいでしょうし、それを全うするだけでも大変なことでしょう。でも、その仕事をしながらでも自分のやりたいことがもしその他にあったら、『無理かもしれないからやめよう』ではなく『やれるかもしれないからやってみよう』と思ってトライしてほしいです。いいですか、自分で自分の限界を作らないで下さい!」と述べました。



わたしは、高校生の前で話したのは生まれて初めてです。
最初はどうなることやらと思いましたが、明治学園高校のみなさんは、みんな真摯に一生懸命に聴いてくれました。その真剣なまなざしに若い情熱を感じました。みなさんがいつの日か真の国際人として大活躍する日が来るのを楽しみにしています。今日は、本当に良い経験をさせていただきました。お世話になった明治学園の先生方に御礼を申し上げます。
また、ニンプィンウーさん、石田部長、冨樫君、どうもありがとう。感謝しています!



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年11月4日 佐久間庸和