人間尊重を求めて

今日の「毎日新聞」朝刊に第25回目の「北九州発 ハートフル通信」が掲載されました。
今回のタイトルは「人間尊重を求めて」です。


毎日新聞」9月5日朝刊



最近、わたしは人に会うたびに1冊の本をお渡ししています。わたしには約70冊の著書がありますが、渡すのは自分の本ではありません。わたしの父であり、サンレーグループ会長の佐久間進著『『人間尊重の「かたち」』(PHP研究所)という本です。



タイトルにある「人間尊重」は、出光興産の創業者である出光佐三翁の哲学を象徴する言葉です。父が若い頃、地元・北九州からスタートして大実業家となった佐三翁を深く尊敬しており、その思想を象徴する「人間尊重」という語を自社の経営理念としたのです。
以後、「人間尊重」はわが社のミッションとなっています。
サブタイトルは、「礼の実践50年」。これは、出光佐三著『人間尊重五十年』(春秋社)を連想させ、そのまま佐三翁へのオマージュとなっています。



『『人間尊重の「かたち」』で、父は「私の人生を振り返る時、礼の実践を通して、『人間尊重』とはどういう『かたち』になるのかを社会経営、社会貢献の中で目指してきたのではないか、そんな思いがしています」と述べ、さらに「人間尊重とは、人と人とがお互いに仲良くし、力を合わせることです」と書いています。
佐三翁は96年の生涯の中で、自社の社員に「金を儲けよ」とは一度も言ったことがないといいます。その代わりに「人を愛せよ」と言いました。そして、「人間を尊重せよ」と言いました。



「人間尊重」といえば、2500年前の古代中国で孔子が説いた「礼」に源流があります。そう、「人間尊重」とは「礼」の別名なのです。そこに父は気づいたのです。
かつて、陽明学者の安岡正篤は、「本当の人間尊重は礼をすることだ」と喝破しました。また、「経営の神様」といわれた松下幸之助も、何より礼を重んじ、「礼とは『人の道』である」と述べています。さらに「人間尊重」の思想は、「人が主役」と唱えたドラッカーの経営思想にも通じます。父が座の銘とし、わが社のミッションとした「人間尊重」は、孔子から出光佐三まで多くの偉大な先人たちのメッセージが込められているのです。  



冠婚葬祭業を生業とするわが社においては「礼とは人間尊重である」という考え方を全社員で共有することを目指しています。
最後に、出光佐三翁は「石油業は、人間尊重の実体をあらわすための手段にすぎず」という言葉を社員に伝えています。不遜を承知で言わせていただければ、わたしは「冠婚葬祭業とは、人間尊重の実体をあらわすことそのものである」と言いたいです。


人間尊重の「かたち」

人間尊重の「かたち」

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2014年9月5日 佐久間庸和