矢作直樹(3)


見える世界と見えない世界は同じ




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、「勇気の人」こと矢作直樹氏の言葉です。
矢作氏は、東京大学大学院医学系研究科・医学部救急医学分野教授にして、東京大学医学部附属病院救急部・集中治療部部長として有名な方です。


命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

ご縁とは不思議なもので、医療界のトップにある矢作氏との対談が実現し、共著『命には続きがある』(PHP研究所)を2013年7月に上梓させていただきました。
わたしは、愛する人を亡くした人の悲しみを軽くするための「グリーフケア」の普及をめざしています。グリーフケアは医療・葬儀・そして宗教の3つのジャンルが協力しながら進めていくべき大いなる「こころ」の仕事です。誠に僭越ですが、矢作氏との対談本が日本人にとってのグリーフケア普及の一助となることを願っております。



この対談の中で、矢作氏は「現代人の不幸は、死が見えなくなっていることだ」と述べています。科学の発達によって、視覚で確認することが重要視されすぎていると指摘され、今の科学は「先に現象ありき」という状態に墜ちていると喝破しています。
そして、「本来、科学とは『未確認のことを追究する』学問でした。『ありえない』『科学的ではない』と否定することが科学ではないはずです。科学的なことは必ずしも多くない、というよりほとんどが科学では説明できません」と語っています。現在、多くの病気が認識されていますが、原因さえ解明されていないものがほとんどです。



矢作氏は医師でありながら、魂もあの世もあると信じておられる方です。
「大いなるすべて」という表現で神という根源的な存在も肯定されていますが、特定の宗教・宗派の信者ではないことも明言されています。
その上で、ブッダの「空」の論理について、次のように語っています。
「見える世界と見えない世界というのは、じつは同じです。これがわたしの永遠のテーマです。なぜなら、見える世界は見えない世界によってできているからです。原子などは、その最も良い例ですね。この世界は、見えない原子、さらにそれを構成する粒子によって成り立っているのですから。個々の粒子の量子性は、空間には宇宙全体へ、時間的には過去や未来へと広がる非局在性を持っています」



さらに、矢作氏は場の量子論超弦理論の世界を持ち出して、次のように語ります。
「高次元までふくめたすべての世界の実相が、雲のように存在が自在であると理解しています。これを『空』と考えます。ほかの言葉では『神』『普遍意識』『大いなるもの』『大宇宙』などと呼ばれるものです。そして一番波動の低いこの三次元世界は見かけ上、かたちのある物質世界で、この世界が『色』です。この世界もあくまでも高次元の世界とつながったものです」



真の医師であるがゆえに、多くの死に行く人々の姿を見ながら、多くの尊い命を救いながら、またあるときは看取りながら、矢作氏は真実を語られずにはいられないのでしょう。
まさに「義を見てせざるは勇なきなり」を実践される「勇気の人」であると思います。
そのように素晴らしい方と対談できたことは、わが生涯の良き思い出となりました。


矢作直樹氏との対談のようす



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年3月25日 佐久間庸和