「慈経」の自由訳

今日の「毎日新聞」朝刊に第18回目の「北九州発 ハートフル通信」が掲載されました。
今回のタイトルは「『慈経』の自由訳」です。



毎日新聞」2月21日朝刊



このたび、『慈経 自由訳』(三五館)という本を出版しました。「慈経」(メッタ・スッタ)は、上座部仏教の根本経典であり、大乗仏教における「般若心経」にも比肩します。上座部仏教はかつて、「小乗仏教」などと蔑称された時期がありまし。しかし、上座部仏教の僧侶たちはブッダの教えを忠実に守り、厳しい修行に明け暮れてきたのです。
「メッタ」とは、怒りのない状態を示し、つまるところ「慈しみ」という意味になります。「スッタ」とは、「たて糸」「経」を表します。



2012年8月、東京は北品川にあるミャンマー大使館において、わたしはミャンマー仏教界の最高位にあるダッタンダ・エンパラ大僧正にお会いしました。北九州の門司にある日本で唯一のミャンマー式寺院「世界平和パゴダ」の支援をさせていただいているご縁からだが、そのとき大僧正より「慈経」の本を手渡されました。「慈経」はもともと詩として読まれていました。わたしも、なるべく吟詠するように、千回近くも音読して味わいました。そして、自分自身で自由訳をしたいと思い至ったのです。



象徴的なことに、ブッダは満月の夜に「慈経」を説いたと伝えられています。
満月は満たされた心のシンボルです。ブッダ自身が満月の夜に生まれ、悟りを開き、亡くなったとも言われています。生命のつながりを洞察したブッダは、人間が浄らかな高い心を得るために、すべての生命の安楽を念じる「慈しみ」の心を最重視しました。そして、あらゆる人にある「慈しみ」の心を育てるために「慈経」のメッセージを残したのです。
そこには、「すべての生きとし生けるものは、すこやかであり、危険がなく、心安らかに幸せでありますように」と念じるブッダの願いが満ちています。



また、「慈経」には、わたしたちは何のために生きるのか、人生における至高の精神が静かに謳われています。わたしたち人間の「あるべき姿」、いわば「人の道」が平易に説かれているのです。その内容は孔子の言行録である『論語』、イエスの言行録である『新約聖書』の内容とも重なる部分が多いと思います。
「慈経」の教えは、老いゆく者、死にゆく者、そして不安をかかえたすべての者に、心の平安を与えてくれます。それは無縁社会も老人漂流社会も超える教えなのです。
今度の本には、わが自由訳の文章に世界的写真家であるリサ・ヴォートさんの美しい写真が添えられています。今度の本には、わが自由訳の文章に世界的写真家であるリサ・ヴォートさんの美しい写真が添えられています。この「慈経」によって、1人でも多くの日本人の心が安らかになることを願っています。


慈経 自由訳

慈経 自由訳

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2014年2月21日 佐久間庸和