矢作直樹(1)


人は死なない




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、「勇気の人」こと矢作直樹氏の言葉です。
矢作氏は、東京大学大学院医学系研究科・医学部救急医学分野教授にして、東京大学医学部附属病院救急部・集中治療部部長です。2011年8月に『人は死なない』(バジリコ)という著書を上梓され、同書はベストセラーになりました。


人は死なない?ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索?

人は死なない?ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索?

矢作氏は、医師という仕事を通して死と生に直視してきた経験、大好きな登山で二度も死にかかった経験を持ち、西洋医学では説明のつかない事実があるのだということを堂々と公言されています。現役の東大医学部の教授で臨床医である矢作氏が「霊」の存在を確信し、「人は死なない」と発言されていることに最大の価値があります。ある意味で非常に勇気が要ることであったと推察しますが、それだけに多くの人々の関心を呼ぶこととなりました。



「人は死なない」というシンプルな名言は矢作氏の処女作のタイトルにもなっていますが、正確を期せば矢作氏は次のように発言されています。
「寿命が来れば肉体は朽ちる、という意味で『人は死ぬ』が、霊魂は生き続ける、という意味で『人は死なない』。私は、そのように考えています」
矢作氏は、人間の知識は微々たるものであること、摂理と霊魂は存在するのではないかということ、人間は摂理によって生かされ霊魂は永遠である、そのように考えれば日々の生活思想や社会の捉え方も変わるのではないかと提言されているのです。



たしかに人の魂は肉体が消滅した後も存続すると考えれば、ずいぶんと心が安らかになるのではないでしょうか。この世で二度と会うことはできないという喪失感からご遺族を救う言霊こそ「人は死なない」という言霊なのです。矢作氏が説く“他界した人はどこかで自分を見守ってくれている、いつの日か再会できると考えれば、死別の悲しみの本質が変わってくる”という思想は、まさにわたし自身の思想でもあります。


矢作直樹氏と初めてお会いしたときのツーショット



「人は死なない」は、実は、わたしの口癖の1つでもあります。矢作氏からも高く評価いただいた拙著『愛する人を亡くした人へ』(現代書林)をはじめ、複数の自著で主張し続けています。しかし、日本を代表する一流の医学者である矢作氏が語ったことで、この言葉は「心に残る名言」となり、大きな説得力を生んだのです。言葉というのは、「何を語るか」も大事ですが、ある意味ではそれ以上に「誰が語るか」が大事なのだと痛感しました。


命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

命には続きがある 肉体の死、そして永遠に生きる魂のこと

なお、矢作氏とは『命には続きがある』(PHP研究所)という共著を2013年7月に上梓させていただきました。京都大学大学院の鎌田東二教授(宗教哲学)に続いて、東京大学大学院の矢作直樹教授(医学)と共著を出させていただいたわけです。
これは誠に光栄なことで、葬儀やグリーフケアのお手伝いをすることを通じて「天下布礼」の道を歩むわたしにとって大きな励みとなりました。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年2月9日 佐久間庸和