鎌田東二(1)


神話とは、壊れるものではない




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、「バク転神道ソングライター」こと鎌田東二氏の言葉です。鎌田氏は、著書『古事記ワンダーランド』(角川選書)で、「神話とは、壊れるものではない」と述べています。


鎌田氏は日本を代表する宗教哲学者であり、京都大学こころの未来研究センター教授です。わたしは「義兄弟」として親しくお付き合いさせていただいています。また、毎月、満月のたびに「シンとトニーのムーンサルトレター」というWeb書簡を交換しています。その内容を掲載した共著『満月交感 ムーンサルトレター』上下巻(水曜社)も上梓しています。
その下巻の「まえがき」の最後に、わたしは次のような歌を詠みました。
「人はみな神話と儀礼求むると 文を交わせし師に教えられ」
そう、人類は、神話と儀礼を必要としているのです!
その真実を、わたしは文通を通じて鎌田氏から学びました。


満月交感 ムーンサルトレター 上

満月交感 ムーンサルトレター 上

満月交感 ムーンサルトレター 下

満月交感 ムーンサルトレター 下

昨年(平成25年)は伊勢神宮出雲大社が揃って遷宮を迎えました。
最近では若い人たちの間で、「パワースポット」として神社が熱い注目を浴びています。
「パワースポット」とは、いわゆる生命エネルギーを与えてくれる「聖地」とされる場所です。
宗像大社も日本を代表する神社ですが、2010年10月にここで鎌田氏が法螺貝を奏上したところ、突然、鎌田氏に後光が射して仰天したことがあります。まさに神秘的な体験でした。
わたしは、そのとき、「この人は、神話の世界を現実として生きている!」と思いました。


宗像大社で法螺貝を吹く鎌田氏に後光が!!



日本の神話は『古事記』として集成されました。和銅5年(712年)に太安万侶を撰録者として成立したとされます。鎌田氏が初めて『古事記』に出合ったのは小学5年生の時だったそうです。通っていた小学校の図書館に口語訳の『古事記』があり、この本を読んだとき、突き抜けたような感覚、至福感が起こったのだそうです。そして鎌田少年は『古事記』に書かれている内容を「これは真実だ!」と直観し、我を忘れてしまうほど感激されたそうです。鎌田少年は、神話が持つ命、エネルギーに触れることによって、自分自身は渦の中に巻き込まれ、感動の頂点に達してしまったのでした。一種の神秘体験であろうと思います。



この神秘体験の影響もあったのでしょう。いまや日本を代表する宗教哲学者となった鎌田氏は、『古事記ワンダーランド』の中で「神話とは何か」について次のように力強く述べます。
「神話とは、壊れるものではない。簡単に壊れてしまった原子力発電所の『安全神話』なるものは、その意味で、神話の名に値しない。それは幻想であり、イデオロギーであり、詐術であった。イデオロギーは壊れ、変化する。しかし、神話は壊れることなく伝承されてきた。人類史を貫く根源的な感性や想像力のDNAが神話であり、それはいわばATGCのような塩基記号で書かれている原形的な表象である」
そう、神話が壊れるときは人間が壊れるときであり、人類消滅のときは神話が壊れます。
そして、『古事記』に書かれている日本神話が壊れる時は日本人が消滅する時でしょう。
わたしたち日本人は、そのことを肝に銘じておく必要があるのではないでしょうか。



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2014年2月3日 佐久間庸和