相手の喜ぶことをする

東京に来ています。互助会保証主催の講演会に参加するためです。霞ヶ関商工会館で開かれた「今後のブライダルビジネスの生き残り戦略」という講演を聴きました。
なんでも最近の「おもてなし」ブームで、結婚披露宴の単価が上昇しているそうです。
「おもてなし」といえば、本日、サンレーグループ報「Ray!」10月号が刊行されました。
タイトルは、「おもてなしの時代 相手の喜ぶことをしよう!」です。


「Ray!」2013年10月号



●五輪東京招致のプレゼン
2020年の夏季オリンピックの開催地が東京に決定しました。
アルゼンチン・ブエノスアイレスのIOC(国際オリンピック委員会)総会で東京がプレゼンテーションを行った際、滝川クリステルさんがIOC委員に東京招致を訴えました。
流暢なフランス語とナチュラルな笑顔・・・・・これ以上ない適役でした。
滝川さんは、プレゼンで以下のように述べました。
「皆様を私どもでしかできないお迎え方をいたします。それは日本語ではたった一言で表現できます。『おもてなし』。それは訪れる人を心から慈しみ、お迎えするという深い意味があります。先祖代々受け継がれてまいりました。以来、現代日本の先端文化にもしっかりと根付いているのです。その『おもてなし』の心があるからこそ、日本人がこれほどまでに互いを思いやり、客人に心配りをするのです」



●安全・清潔・親切
さらに滝川さんは「皆様が何か落し物をしても、きっとそれは戻ってきます」と述べ、「世界各国の旅行者七万五〇〇〇人への最新のアンケートでも、東京は世界一安全な街とされました。他にも言われることは、公共交通機関も世界一しっかりしていて、街中が清潔で、タクシーの運転手さんも世界一親切だということです。その生活の質の高さはどこででも感じていただけます」と続けました。
滝川さんのプレゼンは、どこから見ても完璧なものでした。何よりも、「おもてなし」を打ち出したところが素晴らしかったです。彼女が「お・も・て・な・し」と一字ずつ印を切るように発声してから、最後に合掌しながら「おもてなし」と言い直した場面には感動しました。



●「おもてなし」のルーツは神道
「おもてなし」こそは、まさにジャパニーズ・ホスピタリティです。滝川さんが合掌した姿に、IOC委員たちは「理想の日本人」を見たのではないでしょうか。
東京の治安が良いこととか、公共交通機関が充実しているとか、街が清潔であるとか、そういった現実的な問題ももちろん大事です。でも、「おもてなし」という言葉、そして合掌する姿が日本をこれ以上ないほど輝かせてくれました。かつての日本は、黄金の国として「ジパング」と称されました。これからは、おもてなしの心で「こころのジパング」を目指したいですね。
いま、滝川さんの元には仕事が殺到し、「おもてなし」は今年の流行語大賞になるのではないかなどと言われているそうです。
もともと「おもてなし」の心は、言葉を交さなくても相手の気持ちを察することにあり、そのルーツは神道の「神祭」にあります。



●「神祭」から生れた「おもてなし」
山村明義著『本当はすごい神道』(宝島社新書)には、次のように書かれています。
「『神祭(しんさい)』は、自然の厳かな雰囲気など目に見えない貴いとされる神々、あるいは太古の昔から人々に畏れられた自然の脅威や、その自然からの恵みを大切に敬う精神性に基づいています。そもそもは、その人がもっとも大切だと思うものに何かを差し上げることが『まつり』の意味のひとつなのです。その場合には、神聖な場所において魂と心を込めて作った食べ物や、『幣帛(へいはく)』という絹布などを神様に差し上げるための『神祭』が執り行われます。これが日本人の『おもてなし』の原型にあるのです」
なるほど、「おもてなし」の心は、「まつり」から生まれたわけですね。ならば2020年、オリンピックという「地球まつり」において、日本人がそのような「おもてなし」を世界に示すのか。それを考えると、今からワクワクしてしまいます。



●「おもてなし」の2つの意味
2011年11月24日に開催された全国商工会議所の「観光振興大会in関門」で「新しい時代の観光」と題するパネルディスカッションが行われ、わたしは田中亮一郎氏(北九州商工会議所副会頭・第一交通産業社長)らとともにパネリストを務めました。滝川さんは東京の「おもてなし」力を華麗にアピールされましたが、当時のわたしは北九州の「おもてなし」力をアピールしました。「おもてなし」という言葉には次の2つの意味があるとされています。
1.モノを持って成し遂げる → お客様を待遇すること
2.表裏なし → 表裏のないココロでお客様をお迎えすること
この場合のモノとは、季節感のある生花、お客様に合わせた掛け軸、絵、茶器などです。ココロとは、言葉や表情や仕草に表れます。



●もてなし、ふるまい、しつらい
結局、「おもてなし」とは、相手を思いやり、相手を喜ばそうという気持ちの表現であり、「ハートフル」に通じるのです。また、主に茶席や懐石料理の場合ですが、「おもてなし」には三位一体としての「もてなし」「しつらい」「ふるまい」があります。
「もてなし」とは、わざわざ足を運んでいただいたお客様に、できるだけ満足して帰っていただくための迎える側の心構えです。
「しつらい」とは、季節や趣向に合わせて、部屋を調度や花などの飾り付けで整えることで、「室礼」とも書きます。
「ふるまい」とは、TPOや趣向にふさわしい身のこなしをすることです。
2020年に向けて、大いなる「おもてなし」の時代が幕を開きました。わたしたちも、ホスピタリティ・カンパニーとして見本となる「おもてなし」を示していきましょう。




おもてなし 言葉なくとも心読み
        相手喜ぶことを行ひ(庸軒)




*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年10月25日 佐久間庸和