なぜ隣人祭り開く?

今日は、午後からサンレー本社で取材を受けました。
西日本新聞が主宰する「路地裏オトナ塾」の会報誌の取材です。
全部で4回シリーズのインタビューで、一貫したテーマは「冠婚葬祭を考える」です。
今回は第3回目の取材で、「隣人祭り」についてお話ししました。


今日の取材のようす




インタビュアーの女性は、『隣人の時代』(三五館)を何度も読んでくれたそうで、非常に興味を持たれていました。1999年のパリから始まった隣人祭りは、今やヨーロッパを中心に世界30カ国以上、1000万人もの人々が参加しています。隣人祭りのコンセプトは、「助け合い」や「相互扶助」です。それなら、多くの日本人は「互助会」を思い浮かべるのでは? 
正しくは、冠婚葬祭互助会といいます。「互助」とは「相互扶助」を略したものなのです。



わたしはフランスで起こった隣人祭りと日本の互助会の精神は非常に似ていると思っています。 早速、互助会であるわが社では、隣人祭りのお手伝いを各地で行なってゆくことにしました。まずは、2008年の10月に日本で最も高齢化が進行し、孤独死も増えている北九州市での隣人祭りのお手伝いをさせていただきました。その後、年々開催回数を増やし、2013年には550回の開催を予定しています。「隣人祭り」と「隣人むすび祭り」を合わせれば、おそらくわが社は日本でもっとも地域の隣人が集う「隣人交流イベント」あるいは「地縁再生イベント」の開催をサポートしている組織だと思います。


隣人の時代に向かって・・・



本家のフランスをはじめ、欧米諸国の「隣人祭り」は地域住民がパンやワインなどを持ち寄る食事会ですが、そのままでは日本に定着させるのは難しいと考え、わが社がサポートするイベントでは、季節の年中行事などを取り入れています。
たとえば、花見を取り入れた「隣人さくら祭り」とか、雛祭りを取り入れた「隣人ひな祭り」、節分の厄除け祝を取り入れた「隣人祭り 合同厄除け祝」、七夕を取り入れた「隣人たなばた祭り」、秋の月見を取り入れた「隣人祭り 秋の観月会」、クリスマスを取り入れた「クリスマス隣人祭り」といった具合です。



おかげさまで、わが社のプロデュースする隣人祭りは好評を得ています。
これは日本におけるコンビニエンスストアマーケティングを参考にしました。アメリカ生まれのセブンイレブンを初めて日本に輸入したとき、当初はうまくいかなかったそうです。しかし、セブンイレブン・ジャパンの社長であった鈴木敏文氏が日本流に「おにぎり」や「おでん」などの販売を思いつき、それから大ブレークして、すっかりコンビニが日本人の生活に溶け込んでいったことをヒントにしたのです。欧米の文化をそのまま日本に輸入してもダメで、日本流のアレンジが必要であるということを学んだわけです。


石田部長も大いに語りました



また、孤独死の防止を意識するあまり高齢者だけのイベントにすることを避け、なるべく幼稚園や保育園の子どもさんたちとお年寄りとの交流をお手伝いすることを心がけています。
わが社の運営する冠婚葬祭施設などに老人会のお年寄りなどを招き、そこで幼稚園や保育園の園児の楽器演奏やダンスなどを披露すると、お年寄りたちは目を細めて喜ばれます。
演ずる子どもさんたちも喜んでくれる観客の出現に張り切っていますし、保護者のお母さん方も嬉しそうにビデオ撮影などをされています。ここには、非常に幸福な善意の循環があるという気がしてなりません。子どもさんとお年寄りの出会いの場をつくることも「隣人祭り」の大きな役割の一つではないかと思います。今日は、隣人祭りのプロフェッショナル=仕事の達人であるサンレー企画部の石田恭一部長も大いに語りました。


「隣」の意味について説明しました



隣人祭りは、人生最後の祭りである「葬祭」にも大きな影響を与えます。隣人祭りで知人や友人が増えれば、当然ながら葬儀のときに見送ってくれる人が多くなるからです。
わたしが立ち会った葬儀の中には参列者が1人もいないという孤独な葬儀も存在します。そんな葬儀を見ると、わたしは本当に故人が気の毒で仕方がありません。
亡くなられた方には、家族もいただろうし、友人や仕事仲間もいたことでしょう。
なのに、どうしてこの人は一人で旅立たなければならないのかと思うのです。



もちろん死ぬとき、人は1人で死んでゆきます。でも、誰にも見送られずに1人で旅立つというのは、あまりにも寂しいではありませんか。映画「おくりびと」が話題になりましたが、人は誰でも「おくりびと」です。そして最後には、「おくられびと」になります。1人でも多くの「おくりびと」を得ることが、その人の人間関係の豊かさを示すのです。その意味で葬儀の場とは、人生のグランドフィナーレであるとともに、良い人間関係の檜舞台にほかなりません。


天道館について説明しました

天道館を「隣人祭り」の常設会場に!



ITが進歩するばかりでは人類の心は悲をあげて狂ってしまいます。
ITの進歩とともに、人が集う機会がたくさんある社会でなければなりません。
これからも、隣人祭りを通じて、地域の方々の人間関係が良くなるお手伝いがしたいと考えています。ブログ「天道館の竣工式」で、わが社の新しい施設を紹介しました。
この天道館を、隣人祭りの常設会場としても使いたいと思っています。
なお「路地裏オトナ塾」の次号は、10月31日に刊行予定です。


隣人の時代―有縁社会のつくり方

隣人の時代―有縁社会のつくり方

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年9月30日 佐久間庸和