宮沢賢治(1)


世界がぜんたい
幸福にならないうちは
個人の幸福はありえない




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、日本の童話作家で詩人の宮沢賢治の言葉です。
今月21日は宮沢賢治の81回目の命日でした。比叡山根本中堂前の宮沢賢治の歌碑の前では11時半から「宮沢賢治忌」の式典が行われました。終了後、宗教哲学者の鎌田東二氏が「宮沢賢治における宗教と文学」と題して記念講演を行いました。



賢治は、1926年に『農民芸術概論綱要』を書きました。
『農民芸術概論綱要』は、途方もない巨大なスケールを持った思想書です。
その「序論」には、「われらはいっしょにこれから何を論ずるか」という言葉に続いて、以下のように書かれています。




おれたちはみな農民である ずいぶん忙しく仕事もつらい
もっと明るく生き生きと生活をする道を見付けたい
われらの古い師父たちの中にはそういう人も応々あった
近代科学の実証と求道者たちの実験とわれらの直観の一致に於て論じたい
世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない
自我の意識は個人から集団社会宇宙と次第に進化する
この方向は古い聖者の踏みまた教えた道ではないか
新たな時代は世界が一の意識になり生物となる方向にある
正しく強く生きるとは銀河系を自らの中に意識してこれに応じて行くことである
われらは世界のまことの幸福を索ねよう 求道すでに道である
(『農民芸術概論綱要』序論より)




かつて、この賢治の言葉に触発されたわたしは、「ハートピア」という言葉を思いつきました。
心の理想郷としての「ハートピア」には2つの種類があります。
ひとつは天国とか極楽とか呼ばれる、あの世の 理想郷のことで、これをハートピア・ゼアと呼びます。もうひとつは、この世でわれわれが創造するべき愛と平和 の波動に包まれた心の共同体で、これをハートピア・ヒアと呼びます。



ハートピア・ヒアは幸福な人々がつながった心のネットワークです。 真の心の理想郷は、私的幸福である「ハートフル」と公的幸福である「ハートピア」が調和して初めて生まれます。
また、わたしたちの心は一見バラバラのようでも実は深いところでつながっていることを心理学者のカール・グスタフユングは発見しました。ユングはすべての人間の心に共通する底流があると考え、それを「集合的無意識」と 名付けました。



われわれの心が深部でつながっているのなら、賢治のいうように「世界が一の意識になり」 「世界のまことの幸福」を獲得することも夢ではないはずです。そのときこそ、ハートピア・ヒアがわれわれ の前に出現するのだと、わたしは信じています。なお、今回の宮沢賢治の名言は『ハートビジネス宣言』(東急エージェンシー)にも登場します。


ハートビジネス宣言』(1992)



*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年9月24日 佐久間庸和