夏目漱石(1)


とかくに人の世は住みにくい




言葉は、人生をも変えうる力を持っています。
今回の名言は、明治の文豪・夏目漱石の言葉です。
草枕』の冒頭には、あまりも有名な以下の言葉が書かれています。
「智に働けば角がたつ。情に棹されば流される。意地を通せば窮屈だ。
とかくに人の世は住みにくい」
これは人間関係の難しさを見事に表現しています。


草枕 (新潮文庫)

草枕 (新潮文庫)


わたしは冠婚葬祭の会社を経営しています。冠婚葬祭の根本をなすのは「礼」の精神です。では、「礼」とはいったい何でしょうか。それは、2500年前に中国で孔子が説いた大いなる教えです。平たくいえば、「人間尊重」ということです。
わたしは、人類史の中で孔子をもっとも尊敬しています。孔子こそは、人間が社会の中でどう生きるかを考え抜いた最大の「人間通」であると確信しています。その孔子が開いた儒教とは、ある意味で壮大な「人間関係学」といえるのではないでしょうか。



わが社では、「人間尊重」を大ミッションに、「冠婚葬祭を通じて良い人間関係づくりのお手伝いをする」を小ミッションに定めており、全社員がいつも「良い人間関係づくり」について考え、行動しています。具体的には、独身の若者や一人暮らしのお年寄り同士を紹介し合ったり、カルチャー教室を運営したり、旅行やイベントを企画・開催したり、さらには各方面で話題を呼んでいる「隣人祭り」を開くお手伝いなどをしています。
もちろん本業がホスピタリティ・サービスの提供ですので、わが社では、お客様を大切にする「こころ」はもちろん、それを「かたち」にすることを何よりも重んじています。会社からの教育や指導はもちろん、社員各自も日々の鍛錬に努めています。


礼法を伝えた男たち (新典社新書)

礼法を伝えた男たち (新典社新書)


「良い人間関係づくり」のためには、まずはマナーとしての礼儀作法が必要となってきます。日本における礼儀作法は、武家礼法であった小笠原流礼法がルーツとなっています。
ブログ『礼法を伝えた男たち』に書いたように、わたしは学生時代より小笠原流礼法第32代宗家の小笠原忠統先生、および父でもある実践礼道小笠原流の佐久間禮宗会長から礼法を学んできました。26歳のときに、小笠原先生から免許皆伝を許されました。



小笠原流礼法などというと、なんだか堅苦しいイメージがありますが、じつは人間関係を良くする方法の体系に他なりません。小笠原流礼法は、何よりも「思いやりの心」「うやまいの心」「つつしみの心」という3つの心を大切にしています。これらは、そのまま人間尊重の精神であり、人間関係を良くする精神なのです。



わたしは、漱石が「住みにくい」といった人の世を「住みやすくする」魔法について研究し、実践したいと思っています。それは、とりもなおさず「天下布礼」の一環なのです。なお、今回の漱石の名言は『人間関係を良くする17の魔法』(致知出版社)にも登場します。


人間関係を良くする17の魔法

人間関係を良くする17の魔法

*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年9月19日 佐久間庸和