ヤマト運輸に学ぶ

東京に来ています。
今日は、全互協の「事業継承セミナー」が開催されました。わたしが委員長を務める事業継承委員会の主催で、会場は亀戸の結婚式場「アンフェリシオン」でした。


会場になった「アンフェリシオン」

事業継承セミナーのようす



これまで「事業継承セミナー」は業界の方々に講師をお願いしてきましたが、年に1回は異業種の大物経営者のお話を聞こうということで、今回はヤマト運輸(株)の元社長である都築幹彦氏に講演していただきました。講演のテーマは、「お客様に選ばれるサービス〜クロネコヤマトのチャレンジ」です。セミナーに先立って事業継承委員会を開催した後、15時からセミナー開始。司会は、事業継承委員会の吉田昌敬副委員長(メモリード常務)です。
最初に全互協の北村芳明副会長(アークベル社長)が御挨拶されました。
続いて、委員長のわたしが挨拶をしました。わたしは「異業種の中でも、特に関心が深かったヤマト運輸さんの事業継承のお話が聞けるということで大変楽しみにしています。クロネコヤマトの宅急便は、日本が世界に誇るサービス・イノベーションです。わたしたちも儀式産業におけるイノベーションをめざしております。またカリスマ経営者の後を継承された御苦労などもお聞きできれば幸いです」と言いました。


委員長として挨拶しました



都築氏のプロフィールを紹介しますと、1929年(昭和4年)東京生まれ。50年慶應義塾大学卒業後、大和運輸(現ヤマト運輸)入社。59年、路線部営業課長のとき、同部部長に着任した小倉昌男氏と出会い、以後30数年にわたって共に歩みます。小倉昌男氏といえば、宅急便という歴史に残るイノベーションを実現した伝説の名経営者です。同社では、76年(昭和51年)宅急便を開始して事業の大転換をはかり、15年かけて悲願の全国ネットワークを完成させました。都築氏は83年代表取締役専務、87年代表取締役社長(3代目)、91年代表取締役会長、93年取締役相談役に就任され、95年小倉氏と共に退いておられます。


講演する都築氏



講演は、以下の4つの柱に沿って進められました。
1.顧客から、オンリーワンの信頼される会社になるために、業界の慣習を捨てて、さらに喜ばれるような発想の転換をはかること
2.利益は結果であって、常に信頼を第一に優先させること
経営の入り口は二つあって、同時進行はできない
3.特色を持たない会社は成長しない
社員こそ商品であり、他にお客様と触れる社員がその会社のレベルを決める
4.人材育成とリーダーシップ〜どうしたら人は育つのか



小倉昌男という稀代のカリスマ経営者の後を継いで社長を務められた都築氏のお話は、非常に示唆に富んでいました。特に、役所の厚い壁を乗り越える話に感銘を受けました。大の役人嫌いであった小倉氏が運輸省と血みどろの闘いを繰り広げた末に見事に宅急便の事業家に成功したくだりからは、通産省に喧嘩を売った出光佐三の姿を連想しました。出光佐三小倉昌男も、ともに「日本人の生活を豊かにする」という大義名分、さらには志があったからこそ、監督官庁からの圧力や同業者からの妨害にも屈しなかったのでしょう。
そして、「結局は運輸省の役人も1人の消費者であり、宅急便がいかに日本人の生活を楽にするかということがわかったのでしょう」という都築氏の言葉に感銘を受けました。かつてなく社会的使命が鋭く問われている冠婚葬祭業界に身を置くわたしたちも見習いたいものです。


質問コーナーでは前に出てこられました

まさにトーク・ライブでした



その他、「苦情に対しては逃げ腰になりがちだが、すぐ謝りに行けば、それ以上怒るお客様はいない」「お客様からの電話は必ず復唱して、最後には自分の名前を言う」「お客様の立場になって考える」「相手に感謝の言葉をいう」といった具体的なアドバイスをたくさんお話しいただき、大変勉強になりました。都築氏はとてもお話がお上手で面白いのですが、なんとあの「日本の喜劇王」と呼ばれた榎本健一、すなわちエノケンが伯父さんだそうです。わたしは驚くとともに納得しました。講演後の質問コーナーでは、都築氏はグイグイ前に出てこられ、質問者の鼻先に顔を近づけて話をされました。わたしも質問をさせていただきましたが、都築氏の顔の近さに圧倒されました。まさにトーク・ライブといった印象でした。



また都築氏は、企業にとってトップとナンバーツーの組み合わせが非常に大切であり、両者は異なったタイプのほうがいいとも述べられました。いわば『東海道五十三次』の「弥次喜多」が理想だそうです。それを聞いて、わたしは「エノケンの弥次喜多」という喜劇映画を思い出しました。1939年に東宝が作成した作品で、ブログ「地獄」で紹介した映画のメガホンを取った中川信夫監督の作品です。
わたしはエノケン中川信夫も大ファンですので、不思議な御縁を感じました。
「縁」といえば、都築氏は若い頃にヤマト運輸を辞めようと思ったとき、小倉社長から「この会社に入ったのも縁だ。縁を大事にしろ」と諭されて退社を思いとどまったとか。
会場いっぱいに集まった参加者たちの中には二代目経営者も一般の社員の方もいましたが、みなさんそれぞれ都築氏のお話に多くを学ばれたようです。


懇親会の冒頭で挨拶しました

都築幹彦氏と



セミナー後は、都築氏を囲んで懇親会が開かれました。最初にわたしが挨拶して、全互協の山下裕文副会長(117社長)が乾杯の音頭を取られました。そして最後は、愛知冠婚葬祭互助会の金森茂明副社長によって中締めの挨拶がされました。
参加者は大いに情報交換に務め、非常に有意義な時間を持つことができました。都築幹彦先生、素晴らしい御講演をどうもありがとうございました。なお、都築先生は『どん底から生まれた宅急便』(日本経済新聞出版社)という著書を4月に上梓されたばかりです。経営者の迫真の実話が綴られた企業人必読の経営書です。ぜひ、ご一読をおすすめいたします。


どん底から生まれた宅急便

どん底から生まれた宅急便

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2013年5月25日 佐久間庸和