幸せに生きるために


論語塾」の第5回目は、「幸せに生きるために」です。
わたしは、冠婚葬祭の会社の社長を務めています。
経営者として座右の銘にしている『論語』の言葉をご紹介します。


「リビング北九州」2012年9月29日号



「君子は義に喩り、小人は利に喩る。」〈里仁篇〉
「立派な人は正義にもとづいて行動し、ダメな人は利益にもとづいて行動する」の意味です。金儲けはうまいが不道徳な人は、短期的には成功するかもしれません。しかし、いつしか周囲から人が去ってしまいますから、いずれは必ず失敗します。そうならないためには、学び続けることで人格や知性を磨かねばなりません。そして、磨かれた人格や知性は危機のときにこそ発揮され、役に立つのです。これは、わたしの父から受け継いだ教えでもあります。



また、わたしはホテルを経営しています。
名前は「松柏園ホテル」ですが、これは祖父が『論語』にちなんで名づけました。
「歳寒くして、然る後に松柏の彫(しぼ)むに後(おく)るることを知る。」〈子罕篇〉
「冬になってはじめて松や柏が枯れないで残ることがわかるように、人の真価はピンチのときにこそ、はっきりと現れる」という意味ですね。
その人の能力が表面的なものなのか、しっかり身についているものなのかは、緊急時にわかるものです。ふだんから周囲の人たちに親切にしていたり、みんなから尊敬されているような人なら、本当に困ったとき、だれかが助けてくれるでしょう。でも、いつも自分のことばかり考えている人間は、絶体絶命のピンチのとき、誰も手を貸してくれません。けっして、自己中心的なことばかりしてはなりません。これは、わたしの祖父の教えでもあります。



また、人間誰しもまちがえることがあります。だからこそ、間違ったと思ったら、すぐに直すことが大切ではないでしょうか。
「過ちて改めざる、是れを過ちと謂う。」〈衛霊公篇〉
「間違ったと気づいたのに直さない。それこそが本当の間違いだ」という意味です。
自分の間違いを素直に認めることはなかなか難しいことですが、真摯な態度で認めねばなりません。これは、ドラッカーの考え方にも通じますね。この言葉は、わたしの心の支えです。
これらの『論語』の言葉は、けっして経営者やリーダーのためだけのものではありません。あらゆる人々が幸せに生きていく上で最も大切なことを教えてくれる言葉なのです。


*よろしければ、「一条真也の新ハートフル・ブログ」もどうぞ。



2013年4月20日 佐久間庸和